ヨーロッパに行ったことがある方は、「もしそこでの最上の経験はなんですか?」と尋ねられたらなんと答えますか?
私がもしこれを聞かれたら、おそらく
夜に友人と集まって広場でお酒を飲んだこと
と言います。
私はヴェネツィアに1年間留学していました。
それまでヨーロッパは1、2回行ったことはありましたが、住むのは初めての経験でした。
ヴェネツィアは、想像通りの素晴らしい場所です(夢のない話をすると夏場の蚊はだいぶ厄介ですが…)
街並みは素晴らしいし、町中にある教会にはティツィアーノやベッリーニの教科書に載るような有名な作品も数多くあります。
そういった街で散歩すること、美術館を訪れること、ゴンドラに乗ること(これは一度乗る価値ありです)などは非常に楽しいことでした。
けれども1年間の中で、様々ありましたがみんなで広場に座り、買ってきたお酒を飲むこと、これに勝るものはなかったのではないかと思います。
日本でお酒を飲むとなると居酒屋に行く、友人の家に行くくらいしか大学生の時はありませんでした。
そのため広場に腰かけて、夜空の下で飲むことはとても新鮮でした。
はじめは少しばかり慣れませんでしたが、海外で野外でコンサートしたり、オープンテラスをよく見かけたりする理由が分かったような気がします。
日本よりも日が長いというのもあるのでしょうが、なんといっても圧倒的な開放感があります。
とても気持ちいいです(お酒が飲めなくても)
この開放感もありますが、何と言ってもその空間を演出する周りの雰囲気が素晴らしいです。
薄暗がりの中、広場に面した建物がオレンジ色の優しいあかりに照らされて浮かび上がります。建物はここ数年でできたものではなく、何百年も前からそこにあり時を経て熟成されています。
時を経ることでしか醸し出せない、重厚的な雰囲気が、広場の近くを流れる運河や昔使われていた井戸などと相まってアンサンブルを奏でます。
日本でも雰囲気のいいバーやレストランは数多くありますが、この時間が生み出した「深み」にかなうものはないなと思いました。
ヴェネツィアはヨーロッパでも、イタリアでも特殊な街です。それをヨーロッパ全域に当てはめようとすることは、あまりいいことではないと思います。
ただ、私が今まで訪れたイタリアの各都市の centro (中心街)には規模の大小はあれ昔をしのぶところがあります。それは他のヨーロッパの都市でも同じでした。
この時間の「深み」こそが私がヨーロッパに惹かれていた理由であったと思います。
この「深み」は同時に、私が魅力を感じてきたものに共通してあるものでした。
高校生の時、東京大学に行ける能力があるのであれば、京都大学に行きたいと思ったこと、お金持ちになるよりも人生経験や知識が豊富な人間になりたいことも同じ理由であると思います。
ヴェネツィアは少しずつ付け足され、付け足され今の形に町になりました。
そのため、町には時間の層が何層も積み重なっています。
中世、ルネサンス、バロックと様々な様式の建物が立ち並ぶ中で我々現代人が生活している。
そのような「深み」のある舞台でお酒を飲むこと。
例えお酒が飲めなくとも、その空間が自分の物事に対する考え方と合っていたため心地よく感じたのだと思います。
まあお酒も飲めればなお最高でしょうけれど…
最後に…
ヴェネツィアでお酒を飲むとき酔っぱらった時は車ではなく、水路に注意してください。
時々落ちる人がいるようです。
酔っていたかは定かではありませんが、水路に落ちてずぶ濡れになっていた観光客に会ったことがあります。
それではみなさんCiao Ciao.